「モア通信」(毎年3月末発行)

京都モアネットが年1回発行している「モア通信」は、団体の活動報告や会計報告、多文化共生社会の実現に向けた取り組み、そして外国にルーツを持つ高齢者や障がい者の支援に関する様々な情報をお届けしています。実際に活動に携わる多文化福祉委員たちの生の声や体験談も数多く紹介しており、支援の現場で直面する課題や喜び、支援対象者の背景や変化について詳しく取り上げています。ぜひご一読ください。

団体紹介リーフレット

外国ルーツの高齢者支援に関するアンケート調査(2025-05-28)

調査の概要

調査目的

  • 外国人高齢者に対するサービスの現状と課題の把握
  • 支援ネットワークの構築

アンケートの概要

  • 実施主体: 京都外国人高齢者・障がい者生活支援ネットワーク・モア
  • 協力: 京都市保健福祉局健康長寿のまち・京都推進室介護ケア推進課
  • 方法: Webアンケート
  • 実施期間: 2025年1月~2月
  • 送付先: 4777カ所
  • 回答数: 164カ所 (回答率約3.4%)

外国人高齢者からの相談状況

  • 回答事業所のうち、31% (51カ所) が外国人高齢者からの生活課題等に関する相談があったと回答しました。
  • 相談があった事業所の種別では、居宅系サービス事業所(訪問型)が14カ所で最も多く、次いで地域包括支援センターが13カ所でした。
  • 相談があった事業所の所在エリアは、西京区が7カ所で最多、南区と伏見区がそれぞれ6カ所で続きました。
  • 相談を受けた方の国籍は、中国・台湾が22名、韓国・朝鮮が13名と多く、フィリピン、ベトナム、ネパール、ブラジルなども見られました。日本国籍であっても外国ルーツや中国帰国者、家族が外国籍のケースも含まれています。
  • 相談のきっかけは、本人からが37.3% (19件) で最も多く、次いで家族からが25.5% (13件) でした。

支援における困難点

  • 相談があった事業所のうち、61% (31カ所) が多文化背景が原因で対応困難なことが「あった」または「ある」と回答しました。
  • 具体的な困難内容としては、「言葉・コミュニケーション」が83.3% (40件) で圧倒的に多く、「文化・習慣・価値観・宗教など」が54.2% (26件)、「福祉施策の制度理解」が25% (12件) と続きました。
  • 「言葉・コミュニケーション」に関しては、認知症による母国語化、日本語を話せないことによるサービス利用の困難さ、通訳の不足や制度的な制約、緊急時のコミュニケーションの難しさなどが挙げられています。
  • 「介護保険制度など制度・福祉サービス利用」に関しては、制度の複雑さ、多言語対応の資料不足、保険料未払い問題、緊急通報システムの言語対応の限界などが指摘されています。
  • 「文化・習慣・価値観・宗教など」に関しては、日本の常識や文化・風習の理解促進の難しさ、食習慣の違い、考え方の違いなどが挙げられました。
  • 「家族をめぐっての悩み」としては、本人の自立心からの家族への連絡拒否、独居で家族の所在不明、海外にいる家族との緊急対応や終末期医療に関する意見の相違などがありました。

アンケート結果と今後の課題

  • 京都市のすべての区において外国人高齢者からの相談があることが確認されました。
  • 介護保険など福祉制度の理解が十分に浸透していない現状があります。
  • 本人、家族、支援者のそれぞれが様々な悩みを抱えながら支援に挑戦している状況です。
  • 日本人高齢者と共通する課題と、外国人高齢者特有の課題が存在します。
  • 今後は、生活支援・介護・医療といった「ステージに応じた支援のあり方」、多様なニーズに対応するための「多文化資源の必要性」、そして「関係機関のネットワークづくりと当事者・ボランティアとの対話」を通じて、問題解決に向けた支援システムを構築していくことが課題とされています。